台湾の独占禁止法および競争法についてのガイド

    By James Hsiao • Ya Yun (Mya) Hsieh/Dentons
    0
    77

    メイン

    中国

    日本

    マルチレベル・マーケティング(マルチ商法、以下「MLM」)は米国に起源を持ち、事業規模の拡大とともに直接販売業界から進化したビジネスモデルです。台湾において、MLMは広く採用されている事業戦略の一つとなっており、企業が商品プロモーションを行ったり、消費者との接点を作ったりする手段として広く用いられています。

    2014年以前、台湾におけるMLM活動は、「公平交易法」とその下位規範である「多層販売管理規則」(Supervisory Regulations Governing Multi- Level Sales)により規制されていました。

    合法なMLM事業を装った詐欺的スキームが多発し、その多くが深刻な社会的懸念を引き起こしたことを受け、台湾の規制当局は2014年に「多層販売管理規則」を廃止し、専用の法律である「連鎖販売取引管理法」(MLMSA)を制定して、台湾におけるMLM企業に対する法的枠組みを確かなものにし、規制監督体制を強化しました。

    定義および構造

    James Hsiao
    James Hsiao
    シニア・パートナー
    Dentons
    台北
    Tel: +886 2 2702 0208 Ext. 206
    Email: james.hsiao@dentons.com.tw

    MLMMLM事業者、ディストリビューター:MLMSAによれば、マルチレベル・マーケティングとは、ディストリビューターと呼ばれる参加者が、自ら勧誘した者によって構成される階層的ネットワークを通じて、製品またはサービスを販売または宣伝するビジネスモデルのことです。この構造により、人間関係を利用して販売および市場を拡大するために設計された多層構造の組織ができあがります。

    MLM事業者とは、上記のMLMモデルを企画または遂行する会社、事業体、団体、個人のいずれかを指します。MLMSAでは、海外の事業者やそのディストリビューター、あるいは第三者であっても台湾内にMLMスキームや構造を導入または実施する者はMLM事業体とみなされ、同様の規制要件の対象となると規定されています。

    さらに、MLMSAにおけるディストリビューターとは、MLM事業者に参加して製品またはサービスを宣伝もしくは販売し、手数料、賞与、その他の形態の経済的利益を受け取る者と定義されています。ディストリビューターは組織に他者を勧誘することもでき、それにより下位参加者の販売実績または勧誘活動に基づく追加の金銭的インセンティブを得ることができます。特定の条件の下で参加する者、例えば特定の基準の達成後に製品を販売もしくは他者を勧誘する権利を得た者であっても、契約が締結された時点からディストリビューターとみなされます。

    取扱商品の範囲:マルチレベル・マーケティングの文脈において、「商品」とは有形財を指します。しかし、一般にはインターネット接続等のサービスを含む無形財も、MLMという形で流通しています。MLMSAの制定以来、台湾におけるMLM分野は急速な成長を遂げ、商品およびサービスともに、その流通における重要なチャネルになっています。

    MLMモデルの運営上の特徴:MLMの本質は、販売を促進する手段として、個人的なネットワークの複製に依拠するビジネスプランまたは運営上の枠組みに基づいています。参加者は自ら商品を購入・消費するのみならず、外部の消費者へ向けた小売販売に従事し、組織に新しいメンバーの勧誘も行います。個々のネットワークを拡大していくことで、より大規模なMLM組織を形成していくことになります。消費、小売、勧誘を一体化させたモデルであることが、他の流通手法と異なる主な特徴となっています。

    規制およびガバナンス

    Ya Yun (Mya) Hsieh
    Ya Yun (Mya) Hsieh
    アソシエイト
    Dentons
    台北
    Tel: +886 2 2702 0208 Ext. 214
    Email: yayun.hsieh@dentons.com.tw

    事業開始前の届出要件:マルチレベル・マーケティング活動を開始する前に、MLM事業者は台湾公平交易委員会(TFTC)に報告書を届け出る必要があります。この届出には、事業者の基本的な法人情報および主たる営業所、MLMシステムの構造ならびにディストリビューターの参加条件を含む、一定の法定記載事項が記載されていなければなりません。また、ディストリビューターとの間で締結される予定の参加契約の条件、ならびに販売する製品またはサービスに関する詳細(種類、価格および調達先など)も記載する必要があります。

    この義務に違反した場合、10万台湾ドル(約3457米ドル)~1000万台湾ドルの罰金が科される可能性があります。違反の重大性によっては、TFTCは事業者の解散を命じたり、事業の停止を命じたり、最大6カ月間の営業停止を命じることもあります。

    ディストリビューター参加前の情報開示義務:ディストリビューターがMLMプランまたは組織に参加する前に、事業者は以下の情報を開示する義務があります。すべての開示は正確で、完全なものであり、いかなる虚偽表示、隠匿、誤解を招く記述があってはなりません。

      1. MLM企業の資本金および事業売上高
      2. MLM報酬体系およびディストリビューターの参加条件
      3. MLM活動に適用される法規制
      4. 脱退の条件およびその結果生じる法的責任を含む、ディストリビューターの権利、義務、責任
      5. 製品またはサービスの詳細情報
      6. 該当する場合、商品またはサービスの再購入時における減価償却または価値減少の控除方法、その基準および根拠

    この義務に違反した場合、違反の重大性に応じて5万台湾ドル~200万台湾ドルの罰金が科されることがあります。

    書面による参加契約の締結義務:MLM事業者は、ディストリビューターがそのMLMプランまたは組織に登録する際、ディストリビューターと書面による参加契約を締結し、電子形式で締結される場合を含めて、その原本を提供しなければなりません。この義務に違反した場合、違反の重大性に応じて、5万台湾ドル~200万台湾ドル罰金が科されることがあります。

    財務および業務記録の保存義務:MLM事業者は、毎年5月末までに、前会計年度のMLM事業に関する貸借対照表および損益計算書を主たる営業所において作成し、保管しなければなりません。事業者は、台湾内における組織開発、製品またはサービスの販売、賞与配分、返品の対応状況などについての月次記録を5年間保持しなければなりません。この義務に違反した場合、違反の重大性に応じて5万台湾ドル~200万台湾ドルの罰金が科される可能性があります。

    MLM事業者による禁止行為:MLM業務の公正さを確保するため、MLMSAは、ディストリビューターの収入は新規参加者の勧誘によるものではなく、主として適正な市場価格で取引される商品やサービスの推進・販売から得られることを義務付けています。この義務に違反した場合、7年以下の懲役または1億台湾ドル以下の罰金を科される可能性があります。またMLM事業者は解散、業務停止、最長6カ月間の営業停止を命じられる場合があります。

    MLM事業者は以下の行為に関わることを禁じられています。

      1. 研修、セミナー、ネットワーキングイベント、会議、昇進プログラム、あるいは類似の活動を口実に、実費を著しく上回る費用の支払いをディストリビューターに求めること
      2. 保証金、違約金、その他の料金として、過度の、あるいは法外な支払いを要求すること
      3. 一般人が短期間に合理的に販売できる範囲を明らかに超える量の商品を、ディストリビューターが購入するように誘導すること。ただし、再販売まで支払猶予がある場合は除く
      4. MLMプランや構造に反して特定の個人に優遇措置を与え、それにより他のディストリビューターの利益を損なうこと
      5. ディストリビューターを不当に勧誘し、MLM組織を促進する権利を2つ以上購入または保持させること
      6. ディストリビューターに対して、著しく不公正または不当な義務を課すこと

    これらの禁止行為に違反した場合、違反の重大性に応じて5万台湾ドル~200万台湾ドルの罰金が科される可能性があります。

    TFTCによる最近の執行事例

    MLMSA違反に対して執られたTFTCによる最近の執行事例は、主に以下のようなコンプライアンス違反となっています。

      1. MLMプランまたは組織への登録時に、ディストリビューターと参加契約を締結しなかったこと。
      2. MLM活動の開始前にTFTCへの届け出を怠ったこと。
      3. ディストリビューターの収入に関して誇張または虚偽の宣伝を通じて活動を勧誘したこと。

    例えば、2023年1月からVegen Asia Taiwan Branch(本社、シンガポール)は、台湾においてVyvo SocialFiの「Vyvo SocialFiリワード・プログラム」を導入し、VyvoのMLM事業に参加するメンバーの勧誘を開始しました。しかし、Vegen Asiaは、その活動の開始前にTFTCに必要な届け出を行いませんでした。その結果、同委員会はVegen Asiaに50万台湾ドルの行政罰金を科しました。

    DENTONS
    3F, No.77, Sec.2, Dunhua S. Rd., Daan District,
    Taipei City, Taiwan
    Tel: +886 2 2702 0208
    Email: james.hsiao@dentons.com.tw
    www.dachenglaw.com.tw